Profile: 村山 晋一郎(むらやま しんいちろう)
1968生まれ。宇多田ヒカル、平井堅、古内東子から上原多香子や酒井法子などさまざまなアーティストの作曲、編曲、リミックス、プロデュースを手掛けるサウンド・クリエイター。長いサラリーマン生活を経て脱サラ転身したという異色の経歴を持つ。少年時代をアメリカで過ごし本場のR&Bを体感。グルーブ感溢れるトラック・メイキングが定評。
最近の代表作品は今井絵里子「Don't stop the music」のリミックス(AVCD-16013)、Lyrico「Flowers」のアレンジ(SRCL5346)、平井堅「ex-girlfriend」の作曲、編曲、プロデュース。

皆様、こんにちは。この度は3回に分けて私の音楽制作についていろいろと紹介させていただくことになりました。プロやアマ問わず皆様の音楽制作の参考になれば幸いです。よろしくおつき合いください。第1回目の今回は、まずは私自身の現在に至るまでの音楽遍歴や現在の機材のシステムについてご紹介いたします。

私が音楽を始めたのは日本に帰ってきた高校1年生の時。それまでリスナー専門だったのが、自分でも演奏したり曲を作ったりしたいという欲求が少しずつ増してきており、両親の許可が下りたのをきっかけにバイトで貯めたお金でエレキギターを購入したのが最初でした。練習してバンドを組んで学園祭やライブハウスで演奏したり、オリジナルも作ってレコーディグしてデモテープを作ってみたり。当時の担当はギターやボーカル、ベースなどでした。

次第に宅録にも目覚め、4トラックのカセットMTRやエレドラを購入して、全部自分で演奏してデモを作ってはコンテストに応募していました。さすがにエレドラを家で叩いていると家族から苦情が出てきたので(笑)ドラムだけはBOSSのDr.Rhythm(型番は忘れてしまったなぁ)で打ち込むようになりました。大学に進学した頃から、シーケンサーやシンセサイザーもだいぶ安価になってきたため、ようやくRoland D-10とKAWAI Q-80を購入し、打ち込みを本格的に始めました。バイトをして機材もだんだんアップグレードしていき、同時に打ち込みの技術も進歩して段々と充実した音も作れる様になっていったのです。


自分にとって革新的だったのは大学3年生の時に購入したサンプラーのRoland S-750で、これにより音作りの幅がグッと広がり、その後に購入したApple Macintosh ClassicとシーケンサーのOpcode Visionを導入したことで、もっと掘り下げて楽曲を制作することができるようになりました。ロック、ジャズ、民族音楽や環境音楽に至るまで、いろんな音を聴いてはコピーして、オケの作り方を研究しながら自分の基礎を作ったのもその頃です。いろんなジャンルの音楽を吸収して最終的に行き着いたのは最初に熱中した洋楽のブラック・ミュージックで、それが自分のルーツだといえるでしょう。幸いながら思春期にアメリカでの生活の中を体感したということも大きな要因になっていると思います。

大学を卒業して就職してからも制作熱は冷めず、職を転々としながら常にバンドをやったり、宅録してデモテープを作ってはいろんなオーディションやコンテストに応募していました。所帯も持ち、年齢も20代後半に差し掛かり、そろそろ趣味レベルに止めるべきかと真剣に考え始めた矢先、以前送付したデモテープがポニーキャニオンの新人発掘セクションに気に入ってもらい、作曲や編曲のアルバイトを始めたのがターニング・ポイントでした。段々とギャランティーや仕事の質も上がり、やがて本職となり現在に至ってます。

結果的には1本のデモテープがきっかけとなった訳ですが、それまでに各レコード会社に送ったデモテープの数は述べ300本以上はあると思います。当時はR&BやHip Hopという概念が一般的になく、今の様に若い人が行くクラブも少なく、その頃から作っていたブラック・ミュージック系の音はなかなかレコード会社に送っても受け入れられませんでした。しかしポピュラリティーが欠落している音楽だとも思えないし、決してマニアックな音楽だとも思えなかったので、自分の中ではいつかはメインストリームになり得ると信じて、その時までに実力をつけておこうと逆に決心するきかっけにもなったものです。

プロの作家やプロデューサーはほとんどの人がそうだと思いますが、依頼があればどんな音楽でもこなせます。が、特定の分野でもっともその力を発揮するという個性があり、その個性が最大の売りでもあるわけですから、幅広くいろんなことを吸収しながら「これだけは人に負けない」というものが必要だと思います。私もR&Bに限らずダンス・ミュージック系全般の仕事の依頼をいただきますが、ブラック・ミュージックの基礎があるので、どんな類いの音でもグルーブ感を必然的に追求することになります。その結果、広い解釈でブラック・ミュージックともいえるオケに仕上がり、最終的にはその傾向が仕事を発注する側の利害と一致する結果になる訳です。

私がそもそもローランドのこういうコラムで原稿を提供しようと思ったのも、私自身の成長の過程にはいつもローランド製品があったからです。前述の通り最初に購入したキーボードはD-10、そしてその後A-50、JX-10P、JV-80、XP-50、最近はClavia社のNord Lead 3を使っていますが、長年親しんできたローランド・タイプのベンダーに慣れ過ぎてしまったためなかなか馴染めず、「また元に戻ろうかなぁ」なんて思い始めているところです。

音源もまさにローランド製品の進歩と共に自分自身も歩んできたといっても過言ではありません。U-220から始まりJV-880、JV-1080、JV-2080、そして現在のXV-5080がメインの音源となっています。これらの製品のいいところはオケの中で生きる実用性の高い音色の集大成だったということで、新機種に移り変わってもそのコンセプトや実際の音ネタも継承されているため、過去の打ち込みテクニックなどがそのまま蓄積できるという点です。サンプラーもS-750からS-760に移り随分長い間使い続けていました。パソコン用のCRTモニターとマウスでの抜群の操作性やフィルターの効きの良さはいまだに忘れられません。



   
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