Profile : 五十嵐公太
幼少の頃からピアノを始め、高校時代からドラマーとしてコンテストに出場。大学時代にはカントリー、オールディーズなどのバンドを経験。85年に十二単、TV-WILDINGSといったバンドで活動した後、92年にJUDY AND MARYに参加し、フルアルバム6枚、シングルを21枚発表。01年にJUDY AND MARY解散後、さまざまなアーティストのレコーディングやライブ、及びプロデュース活動を展開している。
 
まずなぜドラムを選んだのか理由を教えてください。
 五十嵐(以下I):中学3年の時に当時流行っていたディープ・パープルとかが好きでバンドを組みたかったから。本当はベースをやりたかったんですけど、もう形ができているバンドに入ったので、すでにベースがいたんですね。じゃあ何をやろうかって時に空いてるパートがドラムとボーカルしかなかったんです。歌を歌うのは嫌いじゃないけどフロントマンは嫌だからドラムを選んだんですけど、なんか自分に合ってたみたいですね。
  
ドラムを始めた頃、どのように練習をされていましたか。
I )最初の頃は実家でドラム・セットを叩けたので、それで練習をしていました。
  
ドラムを始めてすぐにドラム・セットを買われたんですか。
I )結構すぐ買っちゃいましたね。うるさい楽器なので2回くらい苦情がきましたけど。一度目は市の公害局の人がきて「苦情がきてるんで少し控えてください」と。2回目は「今、葬式やってるから、今日は勘弁してください」と(笑)。
  
誰か先生についたり、スクールに通って習われたことはありますか。
I )最初に親から楽器をやるなら基礎を学んだほうがいい。知り合いにクラシックのパーカッショニストでドラマーの人がいるから習いに行けと言われました。でも、ロックをやりたくてドラムを始めたのに、レギュラーグリップ用に斜めになってる練習台で基本練習しかさせてくれなくて、「俺、キッスとかディープ・パープルがやりたくてドラム始めたのに、何でこんなことやってるんだろ?」って思いながら教えてもらっていたので、1年半くらいで辞めちゃいましたね。でも後になってそういう練習が役に立ってるなと思いましたよ。
  
電子ドラムは興味を持たれたのはいつですか
I )ローランドのオクタパッドのPAD-8と生ドラムと組み合わせて、ソロの効果音的に使ったり、トリガーと組み合わせて使うことはありました。V-Drumsに関しては、自分も実際にレコーディングやライブでもガンガン使っているんですが、生は生として、V-DrumsはV-Drumsとして、別の楽器として演奏スタイルに合わせて選んで使っています。
  
全く違う楽器としてスタイルに合わせて選んで使用するという、具体的な例をお聞かせください。
I )以前からテクノに興味を持っていて、やってみたいと思っていたんですが、テクノと生ドラムというのがどうしてもシンクロしなかったんですね。でもV-Drumsはテクノにもシンクロするわけです。
  
それは音に関してですか。
I )音もそうですし、パフォーマンス的にも。テクノってずっと同じフレーズの繰り返しで、音色が小節ごとにバッと変わったりしますよね。それをパフォーマンスとして実際にやるとなると生ドラムでは無理。ひとつ前のV-Drumsも持っていたんですけど、今回のV-Drumsは本当に凄いじゃないですか。V-Hi-Hatにしても凄く自由度があるし、より自分の体内にシンクロする感じがするんです。
  
生ドラムを叩いてきた身体にシンクロする、ということですか。
I )そうですね。ハイハットの「ついてき方」とか。前は「ハイハットを真似したもの」という感じでしたが、今回のはハイハットに限りなく近い。それから、生ドラムとV-Drumsの大きな違いは音色を自由に変えられることですよね。ステージで生ドラムを叩く時にタイコの数を増やすことはできても、それ自体の音は変えられない。V-Drumsはそれこそ1小節ごとに音色変えられる。だから今回も曲によってはパッド全部にスネアをふったり、普通だったらありえない40インチのチャイナ・シンバルだって使える。僕はロック・バンドをやってきましたが、ロック・バンドの中でそれを実際に使えるかっていうとTPOを感じてしまうけど、テクノだったら何でもアリ、どんな音が出ても驚かないでしょう。
  
今回のステージではいろんな音を使われて、生ドラムではあり得ない音量のバランスで演奏されていますよね。
I )ええ、それが生ドラムで一番ネックになる点で、つまり生の楽器にはレコーディング・マジックがあるじゃないですか? エフェクターをかけたり、録り方を工夫したりして、生ドラムでカッコいいなって思う音を作っても、ライブではその音を出すことはなかなか難しい。でもV-Drumsだったらそれが出るんですよ。コンプをかけたファットなサウンド、別な場面ではディストーション・サウンド。そうやってレコーディングで作った音がライブでもその通りに出るんです。それは生ドラムでは絶対にできないことです。瞬間で音が変わるのは電子ドラムならでは。面白いですよね。
  
ご自身で音色のエディットもされるんですか。
I )ええ、最初にV-Drumsのこの音を使いたい、っていう発想から曲作りをスタートしていないので、基本的には楽曲ができてからV-Drumsの音を当てはめてみて、ピッチや音色を変えて音が抜けて出るようにしましたね。結局ね、ドラマーとしてずっと生ドラムを叩いてきたので、生ドラムのチューニングとか好きな音ってある程度決まってるんですよ。V-Drumsの中で生っぽい音を探していくと必然的に自分の好きな音になっちゃうんですよね。だから楽曲が先にあって、それに合う音を選んだほうがいろんな音が使えて、こだわりがなくなるんです。
  
先ほど演奏を聴かせてもらって、ドラムンベースを人力で、リアルタイムで演奏しているという印象を受けました。
I )まさしくそう。音楽としてテクノは好きなんですが、テクノのライブって、ステージ上はまあ、VJが映像を流して、人は機材をいじってるだけで、人がいても誰も居ないのと同じだなって思っていて、何であのライブで盛り上がれるのか、自分の中で凄く不思議だったんです。そこでテクノのトランス感と今まで自分がやってきたライブ・パフォーマンスをミックスできないかなと思ったんです。例えばステージでドラムを叩いている絵って“人間が何かをやっている”感じがしますよね。それにVJの映像とテクノのトランス感をミックスした音楽ができればと。だから今回のイベントは自分の中で凄くいいキッカケだったんです。曲も全部新しく自分で作ったんですけど、これをキッカケにクラブでもVJとかを入れてライブをやろうって思っています。新しい形のテクノをやってみたいなぁって。V-Drumsに出会ったことで世界が広がって、凄く嬉しいなって素直に思いました。
  
テクノのパフォーマンスとしてDJ以外の見せ方ができると、クラブシーンやテクノ、トランスのイベントの楽しみが変わりますよね。
I )そりゃ変えたいですよ。テクノにヒューマン・パワーを加えたいですよね。だからステージで目立つようにもっと派手なV-Drumsを作ってください!(笑)。黒ってステージで一番沈む色ですから。簡単なことだからぜひお願いしたいなぁ。
  
では最後に、読者のV-Drumsを使っている人たちに使い方、考え方などアドバイスをお願いします。
I )V-Drumsっていろんな音が出るし、間口がとっても広いじゃないですか。だからまず、これをどう使うかを考えてほしいです。与えられたものに対して、それを実際にどう使うかを自分なりに考えることが大事です、これは難しいことなんですけどね。見方を変えると、これはV-Drumsが楽器として確立している証拠なんです。演奏者をちょっと突き放した感じで、どう使うかを提示されている気がします、つまり限りなく自分自身を表現できる楽器になっていると思いますよ、それが楽器というものなんですけどね。そういう意味でも、今後はV-Drumsしか叩かない“Vドラマー”がいてもいいと思います。
 
 
 
 
 




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