PROFILE:(写真左から)
横山英規:スクズプ(B)/音楽監督・編曲
近田春夫&ビブラトーンズでデビュー。その後、エミ・エレオノーラらとデミセミクェーバーを結成。サウンドプロダクションの核を担う。UA、CHARA等のライブサポートやレコーディングの他、ザ・スリルでも活動している
近田潔人:シュラトコ(G)
10代の頃よりプロとして活躍。石井竜也、夏木マリ、birdを始め多数のアーティストをサポート。02年、初のソロアルバム『ONE SUNNY DAY』を発表、レコーディング、アレンジ、プロデュース等多方面で活動中。デミセミクェーバー伝説のグルーピーとしても知られている
テラシィイ:ジャセック(G)
本名:寺師徹。音色系ギタリストとして、ギターの枠を超えた多彩な音を作り出す。これまでショコラータ、ザ・スリル、東京スカパラダイスオーケストラに在籍。また三上博史、高橋幸宏、竹中直人等のサポートを務める一方、映画のサウンドトラックの制作、TV出演等でも活躍。現在はデミセミクェーバー、梵鉾! で活動中
中幸一郎:クリストフ(Dr)
デミセミクェーバーのドラマーとして活躍する他、これまでに布袋寅泰、CHARA、hitomi、DA PUMPなど、さまざまなライブサポート、レコーディングに参加。さらに新人バンドのプロデュース、ストリップとドラムのコラボレーションなど幅広く活動中
エミ・エレオノーラ:イツァーク(P/Cho)
ミュージシャン、音楽芸者。デミセミクェーバーのボーカリストを務めるかたわら、ピアニスト、作曲家、本の出版など、多方面で活動中。著書に小説集『何て素敵!』、森園みるくの『DRAG』の原作等がある。最新作としてはデミセミクェーバーの6枚目のアルバム『Dog Bless You』(ベイクドアップルレーベル)、白川幸司監督作品の映画『マチコのかたち』に出演している
 
あのデビッド・ボウイがグラミー賞授賞式を蹴ってまで観に行ったというオフ・ブロードウェイの大人気ロック・ミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』。日本では映画が2002年に一般に封切られ、特に東京の渋谷シネマライズでは18週以上の上映ロングラン記録を打ち立てました。今回は、国内で初となる『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の日本版ミュージカルにご出演の方々をお招きしてのインタビューです。劇中バンド、ズィ・アングリーインチとして舞台上で演奏を行なう皆さんは、普段のライブとは違う環境での演奏を、どのような思いで楽しんでいらっしゃるのでしょうか。舞台にかける意気込みや演奏のこと、また使用されている楽器や機材のことなどについてもお聞きしました。さらには、主演の三上博史さんのコメントも合わせてお届けします。
 
 
まず、横山さんにお聞きしますが、舞台の音楽監督としてヘッドアレンジなど、ご自身がご苦労されたことを教えてください。
横山(以下Y)原曲があるので実際に僕がやることはそんなになくて、どういう人たちと演ったらいいか、メンバーの人選を考えることで80%くらいの仕事は完了しましたね。あとはみんなに任せればいい。信頼できる人たちなので、苦労らしい苦労はないですね。
お任せする時は、皆さんに譜面を書いて渡したんですか?
Y それも最初は書いていたんですが、ちゃんと曲をもらった時に元々の楽譜が見つかったので、「なんだ、あるじゃん。コレ、自分で適当に見やすくしてちょうだい」って渡しただけ。結構お気楽な感じですよ。ただ、ギターが2人いるので、そのコンビネーションだけは考えてねって伝えました。でも僕が考えたわけじゃない(笑)。

「考えてね」と言われたほうはどうされたんですか?
テラシィイ(以下T)先に好きなパートを取った者勝ち。主に技巧的な部分を近田君にやってもらって、僕はわりと視覚的なほうで貢献している感じです(笑)。

近田(以下K)サントラが2枚あるのでそれを聴きながら、良いところは似せて、また自分たちの解釈でできるところは変えていきました。曲の長さについても、舞台ができ上がっていく過程の中で「ここはもっと長くしよう」とか。客席に降りる部分は長くしようとか。公演が始まる直前に決まったこともあります。
サウンド的な部分でのこだわりはありますか?
Y もちろん、ロック的な意味でいい音にしたいという気持ちはありましたけど、それを僕がいちいち言わなくてもきちんと実現してくれる人たちなので、細かいことは言わないですね。

キーボードご担当のエミさんは、音色をご自分で作られているんですか?
エミ(以下E)私は音作りをしていないくて、全て横山さんがやっています。でも「ウィケット・リトル・タウン」という曲で、原曲では使っていないエレクトリック・ピアノのサウンドを使いました。楽曲のイメージとしてエレピを使いたかったんです。音色のチョイスは横山さんにしていただきましたけど。

舞台を観ていて、とてもきれいな音だなと思っていたんです。
E) この曲は、物語の情念に関わる場面で繰り返し使われるので、弾いている時の気分が毎日違うんですよ。三上君の演技を受けて、私の演奏も変わってきます。
それは音が変わるということですか? それとも演奏の感情が変わるということですか?
E) 心が音に出るんですよ。いつも泣きながら弾いています。横山さんに「ノー・ハートで弾いてくれ」と言われている「天国への階段」とは対極にあります。他にも、最後から3番目「ヘドウィグズ・レイメント」っていう曲。その曲の前の芝居がヘドウィグとの感情的なやりとりなので、これも毎回ほぼ半泣き。私は本当にその人になりきるしかできなくて、イツァークとして弾いてるからなんです。ただ、原作のイツァークはローディーで、ピアニストじゃないですよね。だから私が初めてイツァークの気持ちを音で表現をしています。
T) 「ヘドウィグズ・レイメント」が一番日によって変わっているかな。2人の気持ちが一番表れるところだから。全体的なものも荒々しく盛り上がる時もあれば、平坦な感じの時もあるし。

エミさん以外の皆さんも毎日違う演奏感覚になる部分があるんでしょうか?
T) まだ始まって間もないので、これから毎日舞台をこなしていくうちに変わっていくだろうなという感覚はあります。気持ち的にも、意図的にも。本来、効果音的に出している音も、勝手にちょこちょこ増やしているので、そのうち演出家の先生にピシッと怒られて、また少しずつ減らしていくんじゃないかな(笑)。
Y) 多分俺がまず、そのうち「横山さん」って呼ばれて怒られる気がする……。
K) 最近手数多くない? って(笑)。
T) 元々、台詞に対応している効果音は、中選手のドラムだけですが、それ自体もだんだん増えてきたし。

お客さんのノリやレスポンスを見てアドリブを入れているんですか?
中(以下、N):そういうところもありますね。
その客席とのやり取りでも、ライブとの違いを感じることはありますか?
N) ライブではそんなMCの合いの手みたいなこと、したことないです(笑)。


イツァーク役のエミさんの場合、演奏以外に前で演技をする場面もありますね。また、女性でありながら、男性を演じるというで難しい役柄だと思いますが、どのように役作りをされたのでしょうか?
E) たくさん考えることはありましたね。普段やっているバンドの私とはまったく違う役なので、特に何を勉強するというわけではないけど、結果的に生活全般がまったく変わってしまいました。
生活全般が変わるほど、役にハマってしまったと。
E) ハマりたかったのかすら、今じゃもう分からないほどだけど、こういう音楽関係の取材ではどう言ったらいいのか分からなくて。あまり話したくないっていうか、ミュージシャンには知られたくない(笑)。
T) 普段が彼女はフロントマンで中心になって盛り上げるほうなんで、「おだまりっ」って言われてシュンとなっちゃう役は大変だろうなって思います。
E) いや、そんなことないよ(笑)。でも、普段のバンドのお客さんからも「可哀想!」って言われちゃう。でも、そんなことは全然なくて……。このイツァークという人は凄く抑圧されてる人。簡単に言うと暗い性格の人で、その抑圧感を出すために、真剣に取り組もうとしているだけなんですよ。だから、余計に役作りの話は勘弁して欲しい(笑)。
最後にイツァークの姿がバッと変わる場面で、観てるほうは救われるような気がします。
E) そう解釈される方もいますが、あれはただ解放されたんじゃないと思うんですよ。ヘドウィグにカツラをつけることを許されたかわりに、これからは1人で自立しなきゃいけないんですよね。私は客席側に立っていて、ヘドウィグは向こうに行ってしまうし。100%解放されたんじゃなく、これからがさらに大変なんですよね。
   



   
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