 |
| |
| では曲作りについて伺います。曲のイメージはどのような時に浮かぶのでしょう。 |
 |
| A: |
環境がすべてなんですよ。「HOME」を作った時も「心の戦士」を作った時も、タッチや音がいいピアノを弾いている時はアイデアが降ってくる量が違うんです。自分で入り込めるんですよね。RD-700SXを弾いている時も弾いていて気持ちいいから勝手に手がどんどん動いていって、弾くのをやめたくないからメロディがどんどん生まれてくる。RD-700SXのおかげで最近はアルバムに向けてどんどん曲が生まれてるんですよ。自分が一番好きなのはピアノの音だから、ピアノの音色がやっぱり自分のホームなんですよね。だからそのピアノがいい音色であればあるほど快適な家ということです。 |
|
 |
|
| |
| では曲作りに関して、アレンジも含めて基本的なワークフローはありますか? |
 |
| A: |
まず私が曲を作ってくるんですが、その時点でアレンジもある程度自分の中で聞こえているんですよね。ここでフィルを入れてとか、大体の骨組みがあって、それを松岡さんに最初に聴いてもらって「いい曲やけどAメロがちょっと弱いかな」とか「サビのフックが足りない」って言われて、もう一度考え直してくるとか(笑)。 |
|
| |
| その時点でメロディは実際に歌われているんですか? |
 |
| A: |
きちんと歌詞がのっていることもあるし、単にフレーズだけの時もあります。いろんなこと、本でもそうだと思うんですけど、作者がいい作品を作る、成功するためには天才的なエディターがついているかどうかだと思うんですね。自分で全部やっていないっていうことを暴露するとかではなくて、本当に真剣にサポートしてもらっていて、一緒に曲を作り上げていくんですよ。 3人でひとつの曲に色を付けていくんですけど、でき上がった時に最初に考えていたのと全く違うってことがなくて、ただ、自分の思っていたこと以上に美しい色付けができている。だから3人がイメージしているものがそう遠くないんじゃないかとは思います。 |
|
| |
| 方向性が一緒なんでしょうね。 |
 |
| A: |
方向性が一緒だし、リズム感とか、曲から生まれるインスピレーションが一緒なんだと思う。でもお互いにない発想を持っているからハッとすることもあります。アイデアを共有して作り上げるから面白いんです。私1人でやっていたらここまでできないです。 |
|
| |
 |
| |
 |
| 1月18日にリリースされた2ndシングル「心の戦士」のコンセプトや聴きどころを教えてください。 |
 |
| A: |
一度完成した曲を聴いた時に、松岡さんとの共通の印象として「凄くいいんだけど、ピアノだけ弱いよね」っていうのがあって、せっかくこんなに強いものができたのにこのまま出すのはもったいないって、ギリギリ間に合うかどうかだったけど、1日だけもらってやり直しにレコーディング・スタジオに行ったんです。「よし弾け!」「おっしゃー!」って感じで、歌わなくていいから立ち上がってガンガン弾いていたら、スタジオのアシスタントさんがうわぁ、っていう顔して見てた(笑)。でも心の戦士を聞く度にやり直してよかった! って思うんですよね。 |
 |
| 松: |
ホント、最後の最後までこだわらせてもらった曲だよね。 |
|
|
| |
| 「心の戦士」で伝えたかったことは何でしょうか? |
 |
| A: |
曲のメッセージ自体が凄く前向き。人間は仕事や恋愛などで、日々戦っているものなので、落ち込む時や諦めたくなる時ってたくさんあると思うんです。でも生きることをやめずに前に進むことができるのは、私のイメージでは自分の心のどこかに戦士のような存在がいるからだと思ったんです。それは強さかも知れないし、真の姿とかポリシーかも知れない。そういうイメージが湧いたから歌詞はすんなり出てきましたね。自分を励ますことから始まった曲だけど、この曲を聞いて励まされたと言ってくれる人もいて……。そういう風に誰かが共感してくれるってことがとても嬉しいです。 |
|
| |
| 今後の活動の展望をお聞かせください。 |
 |
| 松: |
自分は日本でずっと育ってきて、日本で音楽をやってきたんですが、彼女は日本で育ってアメリカに行き、アメリカの音楽に触れている。 2人で音楽を始めた時に、僕もいろんな意味で刺激を受けたんですよ。彼女のような歌の力や才能を持っている人間が、もっと日本でスタンダードになっていけば、もっといろんな意味で音楽が良くなっていくんじゃないかなと思っているんです。そのためにもっともっと彼女の曲を世の中の多くの人に聴いてもらいたい。あまり音楽を必要としていない人でも、彼女の音楽を聴いて音楽って凄くいいものなんだなって感じてもらえるような活動をしていきたいと思っています。 |
 |
| A: |
凄く嬉しい言葉ですね。私はピアノを弾いているシンガー・ソングライターといえばアンジェラ・アキって、みんながパッと思い付くくらいになりたい。そのためにライブやCDでより高いレベルを目指してものを作り続けたい。何を弾いても感動させられるんだって気持ちで演奏しなきゃだめですけど、できる限りの高いレベルを目指して、よりいい楽器で、またよりいい環境でピアノ・アーティストとして名前を残していきたいなという気持ちがあります。よくアーティストの方が「歌を歌っていて1人の人でも人生を変えられたら」っておっしゃいますね。それは素晴らしいことですし、音楽の意味でもあると思います。でも、それが1人よりは100人のほうがいいじゃないですか。100人よりも1,000人のほうがもっといいこと。そういう影響を与えられることができる、どこかしらの位置に自分がいるのであれば、それを甘く見ちゃいけないなと思うし、適当にやってはいけないと思う。 |
|
| |
| アンジェラさんにとって、音楽は喜びも多いけれど、怖いことでもあるんですね。 |
 |
| A: |
凄く怖いです。だって、実際に音楽ってネガティブなイメージを伝えてしまうこともあるわけですから。でも、とにかくいいものを作りたいという気持ちが一番強いですけどね。 |
|
| |
 |
| |
| 最後にお1人ずつ、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。 |
 |
| 阿: |
DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)がどんなに進化しても、ピアノなら鍵盤があって、ギターなら弦があってという楽器としての形を知っていて欲しいです。現場では全部シミュレートで終わることもあれば全部生演奏でやることもある。でも実はそのミクスチャーが面白い部分だと思うんです。いい楽器がどんどん安くなってみんなも手に入れやすくなっているからこそ、発想豊かな作品や楽曲がもっとたくさん生まれてくるはず。僕よりも若い人たちがどんどんやってくれることを凄く楽しみにしつつ、僕らも頑張らなきゃという思いもありますね。 |
|
| |
 |
| いろんな音で遊んで欲しいと。 |
 |
| 阿: |
そうですね。僕が打ち込みを始めた時も、普通こんな組み合わせしないよなぁと思いながら、三味線の音とエレキ・ギターの音を組み合わせたりして遊んでいたので。そういう発想の転換って今もかなり生きていると思うんですよ。機械を使って発想を膨らますこと。今はこんなにいい機材があるんだからもっともっと面白い作品が世の中に出回ってもいいはずなんですけど、いつもまだ人間が技術に追いついていない感じを何となく感じているんですよね。 |
 |
| 松: |
僕は阿部ちゃんと違って完璧に生人間なので、打ち込みの素晴らしさを知って刺激を受けたんです。生だけじゃなくてこういう技術を上手く使って取り入れることが凄く大事だなって感じます。若い人だと生楽器からじゃなくてコンピューター・ミュージックから音楽に入ってくる人も多いと思いますが、さらに生の音もちょっとだけでも知った上で使うともっと上手く使えると思います。生楽器のほうがいいとかじゃないですよ。ティンパニとか、家に置けるわけじゃないしね(笑)。 |
|
|
| |
 |
| |
| A: |
私は音楽を目指してやっている人たちに向けてのメッセージだとしたら、私も去年デビューした新人ですけど、同期の人たちと比べたら軽く5年は年上なんですよ(笑)。でも、私が今28歳だから言えることといえば、ただ漠然と「これがやりたい」と言うだけではなくて、明白な夢を持つことが大切だということ。趣味が夢になって実現するには明白な目標があることが大前提だと思います。私もずっと音楽をやっていて、今までも何度もレコード会社と契約するとか、そういう話になったんですが、それが何で上手くいかなかったかというと、明白なゴール、目標がなかったからなんです。 |
|
| |
| それは確固たる決意ということにも繋がるのでしょうか。 |
 |
| A: |
そうかも知れませんね。半年から1年くらいの短期間と、目標を1〜3年の中期間、4〜 5年以上先の長期間の3つに分けたとして、頭で考えるだけじゃなくて、それを紙に書くだけで趣味の枠から一歩踏み出すきっかけになると思います。私もこれから目標としているところに行けるとしたら、これが秘訣なんだよって胸を張って言えるんですけどね。ワシントンD.C.にいた時にウェイトレスのアルバイトをしていたんですけど、お店にエアロスミスのブラッド・ウィットフォードが来たことがあるんです。そのテーブルに行って、おそるおそる「ブラッド、私も音楽をやっているんだけどひと言アドバイスをください」って言ったら、「ここに座れ」って言われて家族の中に座らせてもらって(笑)。「アンジェラ、僕は何十年もエアロスミスのメンバーとして音楽の世界にいる。これはなぜだと思う?」って言うから「それは天才的なギタリストだからじゃないですか」って答えたら、「才能とは全く関係ないんだよ。僕がこれだけ続けてこられたのは、ただ努力してきたから、それだけなんだ。そのことだけは忘れないで欲しい」って言われたんです。目標があってそれに向かって努力をすれば誰だってできることだと。この言葉は未だに忘れない。その時にもらったサインを今も部屋に飾っていて、自分への戒めになっています。面倒くさくなって諦めたくなる時って必ずあると思う。私にもこれからそういう時が来るはずです。でも頑張ろうって思い直して、またくじけて……。人間はその繰り返しなんじゃないかな。特に若ければ若いほど、早く目標が持てれば早く到達できる可能性も増えてくるわけですからいいですよね。私もそうだし、いろんな理由で回り道する人もいるだろうけど、ここがスタートだという時には目標がとても大切だと思うんですよ。 |
|
 |
| お会いしたアンジェラさんは飾らない言葉で音楽のことや自分の体験を丁寧にお話をされる、内面からも美しさを感じさせるとても魅力的な女性でした。インタビュー中はテンポよく会話が繋がって、笑いの絶えない和やかな雰囲気で、アンジェラさん、松岡さん、阿部さんとのコンビネーションも抜群で、3人の間に強い信頼があることが伺えました。プロの音楽制作の現場が垣間見える面白い話が聞けたと思います。 |
| |
 |